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川端さんに知られた時点で、少しだけ嫌な予感はしてたけど、

「偶然だね藤島」

――今は、嫌な予感しかしない。




翔くんと約束の日、5分前に映画館前に着いた私を待ち受けていたのは他の誰でもないでもない早川だった。他の誰かであってほしかった。




「……何でいんの」


「いや、偶然だって! でもここで会えたのはもう運命じゃん?」


「知らねーよ」


「俺も一緒に映画観てってい?」




顔を歪めた私を見て、どう捉えればそうなるのか分からないけれど、オッケーと見なしたらしい早川は私の手を取って自動ドアをくぐり館内に入る。


どんなポジティブだ……! 今日帰ったらいつもの数倍は念入りに手を洗おう。



なんて決意しながら静かでちょっと薄暗い空間で、翔くんを探して周りを見渡せば、まだ彼は来ていないようだった。




「ねー、藤島何観んの? チケット買ってくる」


「……あそこに貼ってあるやつ」


「了解!」




今よくテレビのCMでやっている、少女マンガが原作の恋愛映画のポスターを適当に指させば、早川はルンルンとした足取りで売り場に向かう。