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「翔くんは私の彼氏に相応しくないよ」




はっきり告げたのに、予想に反して翔くんはあまり傷ついている風ではなかった。


特に動じた素振りも見せずに、その返事を知っていたかのように平然としている。



学校祭の片付けの途中、暇を見つけて翔くんを呼びだした理科室はすごく静かだ。




「……そっか」




それでもある程度の間が空いてから声は絞り出されたから、ポーカーフェイスなだけで本当は内心傷ついていたのかもしれない。




「ごめん」


「いいよ別に、駄目元だったし」




駄目元だったのか。その割には随分余裕があったような気がするけど。


……翔くんて何考えてるのかよくわかんないなー。ていうかほんとに私のこと好きなの? あれって告白だった?



ちらりと顔を上げて、気まずく思いつつも目を合わせれば、翔くんは微かに口角を上げた。反対に眉尻は下がって、困り笑いになってる。


その表情に自然と背筋が伸びて、しっかりしなくてはと唇を噛んだ。