「こらこら藤島……!」




目の前のデブを蹴ってやろうかと足を上げたところで、いつかと同じく慌てた声に止められた。


振り向けば、いつの間にいたのか早川が、私の腕を掴む。


なんでいるんだこいつ。いつでもどこでもタイミング悪く現れる。まったく。




「……何よ」


「いやいやいやいや、さすがに知らない人の背中蹴るのはまずいだろ!?」


「……本気で蹴るわけないじゃん、バカじゃないの? 離せ」


「……本気の顔してましたよ藤島サン」




掴まれた手を払いのければ、私が暴れ出さないかと心配しているのか早川は引きつった笑みを浮かべている。



……さすがの私も学校祭に問題起こそうとするほど錯乱しているわけじゃない。


ただちょっとだけ脅して、道をあけてもらおうとしただけだ。失礼な奴め。




「……ていうかなんでいんの?」


「阿部たちと回ってたんだけど、偶然藤島見かけたから」




早川が振り返った先に視線をやれば、是非主演女優賞をあげたいタマネギ姫こと阿部くんと、その他クラスメイトがこちらをはらはらした表情で見ていた。