――ていうか顔が近い。ふざけんな。
慌てて身を仰け反らせ早川と少し距離をとって、また顔をそらした。
……やだな。今は誰とも一緒にいたい気分じゃないのに。いやそんな気分になることの方が滅多にないけど。
頬にかかる髪の毛を耳にかけて、気まずい沈黙を埋めるように小さく咳払いした。
「……あんた、委員の仕事があったんじゃないの」
「あったけど、川端が号泣して廊下歩いてたから藤島となんかあったかと思って」
「……いやそれなら川端さんのそばにいてあげればいいじゃん」
「すぐ幼馴染のとこ行ってたから大丈夫、心配すんな」
そうか。あのあと川端さんは一人で泣いていたのか。私の前では笑ったのに。
意味も分からずズンと心臓が重くなった感じがした。
でも翔くんがついてくれてるなら安心だ。
「喧嘩した?」
「……別に。早川には関係ない」
……さっき嫌なことを思い出したのに、私は結局人を拒絶することしかしないのか。
反射的に口から衝いて出た言葉は早川を突き放すそれであったことに気付いて、勝手に乾いた笑い声が口から漏れる。
こんな嫌な女、早川もすぐに飽きる。愛想を尽かして。そして私を忘れてよ。平気だから私は。あんたたちなんかいなくても。

