いやでも結局その後、お父さんは女と別れて、お母さんもすぐ家に戻ってきたんだけど。
よくあるただの痴話喧嘩だったらしく、今はまあそれなりに仲良くやっている。
家族に対する不満はない。
お母さんは何度も何度も私に謝ってくれたし、お互いしつこく過去を引きずるような性分でもないから、それ以降関係が悪化したわけでもない。
なんじゃそりゃって感じだけど、当時の私にとってみれば十分すぎるほどに大きな事件だった。
お母さんに言われた言葉を忘れることなんかはできないけど、今なら理解することはできる。一人で悩んで辛かったんだろうなーとか。
だから別に悲劇のヒロインぶる気とか、未だ親を許せてないとか、複雑な家庭環境で育ったとかじゃないんだけど。
けどあの日拒絶された記憶は根強くトラウマみたいに残っていて、やられる前にやれ、みたいな教訓を得てしまったことは確か。
あんな思い二度としてやるもんかってばっかり思ってた。
それが正しいと信じて今まで人を拒絶し続けてきたけれど、それが他人を傷つけて良い理由にはならないんだ。
今更変わる気も、変われる気もしてないけど。
自分は随分、川端さんに甘やかされていたんだなあと実感してしまった。

