偏食系男子のススメ【完】





「あーちんが言うように、きらりたち友達なんかじゃなかったのかも」




――そのセリフは、私が待ち望んでいたはずのそれで。


いつもなら鼻で笑いながら、だから言ったじゃない、なんて大人の余裕を見せるのが私のキャラのはずなのに。


何も言えなくて。まだ何も言えなくて。



この前みたいに、川端さんが一方的に怒って拗ねてるだけならよかったけれど。


これまでにないほど冷静に打ち明ける彼女が、少し怖く感じた。



ああ喉が渇く。コーラ飲みたい。逃げ出したい、この空気から。




「あのね」


「……」


「きらりはあーちんにすがりつくのに必死でいっぱい迷惑かけたけど、」


「川端さん」


「冷たくされたらきらりだって、傷つくこともあるよ」




――そんなの、……知らない。



最後まで彼女は、その大きな瞳を潤ませただけで雫を零すことはしなかった。


それが意味もなく私を焦らせ、追いつめる。



翔くんは仕事中で頼る友達なんかいないくせに、逃げる居場所もないくせに、川端さんは私に背を向けて小走りで教室を出て行った。