……ちょっと面白そうやん。タマネギ姫。




「……マジごめん、やっぱ学校抜け出して近くのスーパーで林檎買ってくるよ、俺」


「いや、いい。タマネギでいこう。あと役者にはこのこと言わないで」


「え」


「劇中に林檎がタマネギに代わってることに気付いた役者共の反応って面白そうじゃん」


「……藤島……」




新たな楽しみができた。


ちょっとウキウキしていれば、早川は白雪姫役の阿部くんの方に哀れむような視線を向けている。



すり替わっていることに気付かないまま、タマネギをかじってくれたりしたら最高に笑えることになりそうだと思うのだけれど、それは多分色的にないだろう。残念。




「あーちん、迎えに来たよぉ!」


「げ」




そうこうしているうちに、逃げる暇もなく川端さんが教室の扉からひょっこり顔を出した。


しかもお祭り騒ぎに乗じて調子に乗ったのか、今日の彼女のツインテールにはボンボンの飾りがつけられている。


いつもの黒ゴムだけで結われていたそれでさえウザかったのに、ツインテールに髪飾りは勘弁してほしい。



昨日家を訪ねてしまったことを120パーセント後悔していれば、川端さんはちょこちょこと小走りで私のそばまでやってきた。