「まだ車は来てねぇみたいだし、ここで待ってれば大丈夫だろ」


彼に連れられてついたのはなんとも見覚えのあるカフェだった


あ、嘘...駅、ここにあったんだ


『あ、あの何から何までありがとうございました』

「あのさ、あんた見るからに育ちよさそうだし、あーゆー奴らのカモになりやすそうだから、もう二度と一人で人気のないとこなんて行くなよ。じゃーな、」


それだけ言って彼はその場を離れてしまった


って、あれ?この上着は....


『ちょっ、このブレザーは?』

「やるよ、もういらねぇし。いらなかったらそこらへんに捨てといて」



制服がもういらないって一体どういうことだろう...?


そんなことを考えていて私はふと、彼の名前も聞いていないことに気がついた


しかし、また声をかけようと顔をあげた時にはもう、そこに彼の姿はなく、代わりに遠くに迎えの車が見えるだけだった



「お嬢さま、大変申し訳ありませんでした!」


迎えに来てくれた運転手さんは今にもここで土下座までしそうな勢いであった


『大丈夫ですよ、私も勝手にうろついたりしてごめんなさい。何だかとても疲れちゃって、早く帰りましょう?』


未だに頭を下げ続けている運転手にそれだけ言って車に乗り込むと、今更どっと疲れが押し寄せてきた


睡魔に襲われ意識も朦朧とするなか、私はあの彼の温もりを思い出していた


銀の髪に赤の瞳、ずっと見ているとまるで引き込まれそうになる


今思うと、何だか狼みたいだったな。そんなことを考えて私の意識は途絶えた