50年目のプレゼント

 「望みません。」


 父はきっぱりと言った。

 これはおばあちゃんの意思だ。


 でも、普段の何気ないやりとりの

 冗談交じりに聞いていた事で、

 まさか、こんな日がやってくるなんて

 思いもしなかった。


 部屋を出ると父がボソっと言った。

 
 「ダメかもしれない。」



 (おばあちゃんは死んじゃうかもしれない。)

 
 私は病院を飛び出した。


 全力で走った。


 家に寄って、自転車に飛び乗り、

 森までひたすら漕いだ。

 降り出した雨が顔にポツポツ当たった。