「おかえり、おかえり。

 おばあさん、どっか行っちゃって

 帰ってこーへん。」

 ご機嫌斜めだ。


 「大丈夫。いつもこの時間には

 いるから、そのうち帰ってくるよ。」


 ずっと前から準備していたのだろう、

 おじいちゃんはしびれを切らして

 言った。

 「わし、歩くの遅いで

 もう出るわ。」


 「わかった。あとから

 ちゃんとおばあちゃん、

 連れて行くからスタンバイしといて。」

 
 そう言って玄関まで送ると

 おじいちゃんはくるりと

 こちらを向いて


 「よろしくお願いします。」

 と頭を下げた。