「しっかし補習の後に雨に降られるとは運が悪いよねぇ。」


少し前に出て軒先の上を見ると空には厚い雲がかかっていた。
おもく暗いそれはまだしばらく日差しを見せてくれはしないだろう。

夏といえばあの青い空に映える絵にかいたような入道雲は好きだが、こんな雲は嫌だ。



先ほどまでうるさいぐらいに鳴いていた蝉が静かになり雨音だけが私たちを包んだ。





「ついてますよ俺ら。」



私が口を曲げながら暗い空を眺めているとき、彼は突然そんなことを言った。

その言葉に口をぽかんと開けつつ彼を見る。
彼はこちらを向いて笑っていた。
笑う時に見える白い歯はそこだけじめじめとした空気がないように思えた。



自分の髪から水が落ち首筋に張った。
やけに熱くなった肌に滴る水は、冷たくてくすぐったかった。