笹本くんが怯んだ隙に、口を走らせる。
「私、沙智、成瀬沙智と小学校一緒だったの。」
「…」
「でね、いつも一緒でほんとに大好きだった。お洋服も、靴も、髪型も、一緒だった。」
「……ろ」
「でも、中学校は別々。それでも連絡取ってたんだよ?」
「…めろ」
「さっちゃんね、幼なじみのこととか、学校のこととか、好きな人のこととか、いーっぱい話してくれた。」
「っやめろよ!!!」
そう叫んで、笹本くんは私を見た。
その目は、濡れていた。
「やっと、こっち見てくれた。」
「っ!!」
「よく、言われたんだ…」
笹本くんは私を捉えて固まっている。
そんな彼に近づく。
来るなと、顔を歪め、苦しそうに呼吸する。
あぁ、さっちゃん。
さっちゃん、こんなにも愛されてたんだよ?
記憶から消したいほど、心に貴女は染み込んでたんだよ?
「双子みたいって。」
「うぁあああ!!!!」
泣かないで。
忘れないで。
「さっちゃんをお願い。」
崩れ倒れる笹本くんの背中を摩する。
「さっちゃん、幸せだった。今も幸せ。お願い、忘れてあげないで?」
「さち…。行くなよ…。さちっ!!!」
笹本くんは、私を思いっきり抱きしめた。
彼の瞳に眠る''哀''
私の心に眠る''褪せ''
二つが満たされた。
行き場のない愛が
満ちてく感じがした。
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