ピピ…ピピ…ピピ…






忘れもしない2年前のあの病室。


母の匂いなんて忘れてしまった。病院独特の匂いが私を包む。好きではない。


機械の音だけが規則正しく響く中、母のか細い声は不規則に絞り出される。



「ひなた…。貴女は…太陽の様に…なりなさい…。」



細い細い腕がピクリと動く。



「日が…向く。太陽が、皆を照らすように…貴女も、影にならぬよう…輝きなさい…。」




少し温かい手のひらは私の頬を撫でた。



「ふふ…。なに泣いてるの?大雨ね…。笑ってちょうだい。」



目尻にシワを作って、優しく微笑む。



「愛してるわ…。私は本物の太陽になって…貴女を見てる。私は貴女だけを照らしてるわ…。」



優しい顔をして、母は…、お母さんは、息を引き取った。






お母さん。




お母さんに言われたこと


絶対、絶対、


守り抜く。



だから、見ててね。



私も大好きだよ。