「るな殿、準備はできたか?」
「ああっ!まーくんの事、忘れてた!」
襖ごしにかけられる声に、まーくんを待たせていた事を思い出した。
「忘れられていたとは………」
「ご、ごめん!じゃあ、行こうか!」
私は千春ちゃんと千夏くんに両手をとられながら、部屋を出ると、紺の寝まき用の浴衣の上に、エプロンを着けたまーくんが立っていた。
あっ………。やっぱり、まーくんの和装、凄く似合ってる。何を着てもカッコいいなんて罪だわ。
浴衣だと、それに色気がプラスされて………
「千春に、千夏も居たのか……?」
三人で部屋を出てきた私たちを見て、まーくんは驚いたように目をパチクリさせた。
「お前達、姿を見ないと思ったら……。るな殿に余程なついていると見える」
困った奴等だ、と言わんばかりにまーくんはため息をついた。
「ふふっ、それなら私は嬉しいんだけどね」
「るな殿………かたじけない」
笑う私に、まーくんはホッとしたように笑みを返してくれた。
「かたじけないのは私!まーくん、ここに置いてくれてありがと。そのお陰で……」
一人、不安な夜を過ごさずに済んだから……
無意識に俯いてしまっていた私の肩に、まーくんが手を乗せた。


