「確かに、あんなに生き生きしてる千春と千夏は久しぶりだ。俺は知らないうちに、守ってやらなきゃ何も出来ない、か弱い存在だと決めつけていたのかもしれない」
まーくんはゆっくりと体を起こし、私を見つめる。その瞳を見つめ返すと、改めて真っ直ぐで曇りのない綺麗な瞳だと気づく。
世の中の汚いもの、絶望、悲しみを知りながらもこんなに透き通る強い瞳をもっているなんて、何だか羨ましい。
まーくんに比べたら、私なんて金や欲に眩んだ汚い存在に思える。
「感謝してもしきれない。るな殿、俺は何を返せるだろうか。遠慮なく言ってほしい」
「やだな、私は何もしてないよ。それに、こうやって家に置いてくれて、私こそ感謝しきれないって」
そんなに美化されちゃうと、心が痛い。そんな、感謝されるような事なんてしてない。
あの日だって、ただの気まぐれ。雨が降っていたから、つい目が反らせなかったからだ。
「何か、してほしい事が出来たら、遠慮なく言ってほしい」
「ありがとう、本当に義理堅いね、まーくんは」
引き下がらないまーくんに苦笑いを浮かべながら、私はまーくんの背中を押した。
「さぁ、ご飯食べよっか!」
「っ!!る、るな殿、あまりその………触るのは……」
照れるまーくんに、私は吹き出す。
「そんなイケメンなのに、女馴れしてないんだ?もったいないなぁ~」
宝の持ち腐れとはこの事だ。少なくとも、私がイケメンなら、両手で数えられないほど女の子をナンパする。
すごく刺激的だし、飽きないしね。


