「肘をしっかり締めろ、目線は相手から絶対に反らすな」
模擬試合なのか、竹刀を構え合う教え子達にまーくんは鋭く声をかけている。
お、さすがイケメン………
胴着が似合ってるなぁ………。年下でも、カッコイイものはカッコイイ。
教え子に、真剣に指導する姿、汗ばむ肌、細身に見えていがいと筋肉のあるのが少しはだけた胸元から見える。
「い、いかん。年下のくせにエロい目線で見るなんて!」
そこまでは飢えてないと言いたい。
ブンブンと首を横に振りながら、着替えた私服がおかしくないかと自分の服装を見下ろす。
昨日は寝巻きに浴衣を借りて眠ったけど、さすがに他所の家でパジャマで歩くのは気が引ける。
「ただ、これは気合い入れすぎ?」
私服の花柄のワンピースを着てはみたものの、一応、年下とはいえ、イケメンの男の子だし、気にはするというか……
さすがに、家みたいにパジャマでは歩けない。
少しだけど、ナチュラルにメイクもしている。
「……ん?あれは……る、るな殿!!?」
すると、入り口で不審に立ち尽くしてた私にまーくんが気がつき、すぐさま駆け寄ってくる。
目の前に立たれると、やっぱり大きい。
何センチくらいあるんだろ………
そんな事を考えながら見上げると、まーくんとバッチリ目が合ってしまった。
「ま、まーくんおはよう!」
私は恥ずかしさをごまかすように挨拶をする。
「お、おはようございます。しかし、その呼び方にはその、馴れんな……」
まーくんは気恥ずかしそうに後頭部をガシガシと掻き、私から目線を反らした。
その頬は心なしかほんのりと赤い。
それがなんか可愛い。
「ふふふ、赤くなっちゃって可愛いなぁ」
ニヤニヤとする私を、まーくんは軽く睨む。
「し、しかし、まだ7時、早い目覚めだが……。今日は、休日ではないのか?」
わざと話題を反らすまーくんに、私は小さく吹き出した。それに「るな殿!」とたしなめられるも、怖くはない。


