「ううっ………」
それが祟って、今に至る。
顔を近づけてくる関根さんから顔を反らす。
あぁ、ヤバイ、泣けてきた。
涙で滲む視界に、ムカつくくらい綺麗な月が見えた。
なんで、こんなに満月なのよ……
私は今、誘拐されそうになってるっていうのに……
「可愛がってあげるからね♪」
まるでペットでも飼うかのような台詞に、私は絶望した。
もう、駄目かと諦めかけたその時……
「その人に触るな………下郎」
え、下郎???じ、時代劇??
この時代の者とは思えない言葉、地の底を這うような低い声が響き渡る。皆が振り返ると、そこには……
「それが、聞けぬのなら………斬る」
鋭い眼光で、男たちを睨み付けるサラサラした黒い髪と瞳の男の人は、あの日、あの雨の中で出会ったイケメンだった。
うん?でも、あのYシャツに赤いネクタイ、緑のチェックのズボンは………
この近くにある名門高校、柳丘学院(やぎおかがくいん)の生徒の制服じゃ……
じゃあ、まさか高校生!!?
その高校生らしからぬ高校生が、木刀を構えてヤクザ達と向き合っているのだ。
なんて、不健全な!!!


