麗雪神話~炎の美青年~

ディセルが突然鋭い声をあげた。

見ようとしなくても、すぐに気が付いた。

視界が紫に霞む慣れた感覚は――

“霧”だ!

「霧よ! みんな下がって!」

セレイアはすぐさますらりと槍を構え、四人の族長候補たちを背にかばうように立った。

隣ではディセルが両腕を突き出し、意識を集中させている。

「―霧よ、カタチとなれ!!」

ディセルの声に応えるように、霧が集まり形を持ちはじめる。

みるみるうちに、霧は紫色の甲虫の姿になった。

セレイアはその姿を見るなり少し安心した。

甲虫とは今まで何度も戦っていて勝手がわかっているし、今回の奴は小ぶりだ。楽に倒せる相手だろう。

その油断がある意味仇となろうとは、この時のセレイアは知る由もない。

「ディセル! 私が仕留める! ディセルはみんなを守ってて!」

言うなりセレイアは槍をひらめかせた。