猫の恩返し

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俺の腕にしがみ付いて寝たナツの手をほどき、ベッドから抜け出す

風呂に入らないと言ってきかない彼女を無理矢理風呂に連れ込み体や髪を洗ってやると、風呂上がりには死にそうな顔をしていた

長い髪を苦心して乾かし、眠たいと大あくびをするナツをベッドに連れて行くと、一緒に寝ようと言い出す始末

ベタベタと甘えてへばりついてくるナツを振り払うのに必死で、精神的に疲れたのか数時間ほど一緒に寝てしまっていた


さてと───


食べ終わった食器や、ナツが使った調理器具がそのままのシンクに立つ

普段は適当に買って済ませるので、片付けるのが面倒だというのが本音

ただ、一生懸命料理してくれたナツのことを思い、食器を片づけるのはナツに対するお礼だと自分に言い聞かせ食器を洗った


『お母さんやお姉ちゃんは…人間に連れてかれた』


『きっと…もう───』


ナツの悲しそうな顔が頭をよぎる

殺処分されたであろう、ナツの家族

自分勝手な人間によって捨てられ、繁殖する猫達

捨てたのも人間、それを殺すのも人間

人間を嫌いになれないと涙するナツは、一体どんな気持ちなんだろうか