猫の恩返し

「弟が居たけど、車に轢かれちゃったの…。お母さんやお姉ちゃんは…人間に連れてかれた」


ギュッと唇を結び、目を潤ませる


「きっと…もう───」


それが何を意味するのか、ようやく分かった


「───よく、生き延びたな」


ナツの頭に手を置くと、その両目から大粒の涙が次々こぼれ落ちる

狭いテーブルの向こう側で肩を震わせるナツの隣に行き、そっと抱き締めた


「人間って、自分勝手で嫌…」


「………そうだな」


「…だけど、嫌いになれない」


「………ありがと」


俺の腰に手を回し、ギュッとしがみ付いてくるナツのおでこにキスを落とす

きっと、今まで色んな目に遭って来たんだろう

それでも───


『人間を嫌いになれない』


そう言ったナツが愛おしく思えた