猫の恩返し

「トーゴ………」


「ん?どうした?」


「は…吐く…。気持ち悪い…」


「えっ?!」


いきなりのことに驚いて視線を向けると、顔面蒼白のナツ

動物にもよるけど、確か猫は三半規管が優れているから高いトコから落ちても平気だし、乗り物も平気だと思ってた………けど


「ちょっ…ちょっと待てよ?」


俺が運転席と助手席の間に置いてるゴミ箱を差し出すのと、ナツが吐くタイミングがちょうどで少しだけホッとした

ここが住宅街の道路で車の往来がないため、前後に注意しながら嘔吐物の入った袋を縛り、窓を開け再び走りだす


「大丈夫か?」


ナツの方をチラッと見たが、本人は外の景色が気になるのか、窓から身を乗り出し俺の話など聞いてもいない


───ま、気が紛れたんならいっか


そう思い、駅前のファッションビルに車を走らせた