猫の恩返し

「あーっ!トーゴー!」


庭から聞こえる叫び声


「どうした!」


慌てて飛んで行くと


「バスタオル忘れちゃった」


舌を出し、エヘッといたずらっぽく笑う


「んだよ…、そんなことか」


まとめ上げた髪

襟足からうなじのラインが艶っぽくて、思わず目を背けた


「ね、持ってきてー」


「分(わ)ぁーったよ」


部屋に戻ろうと、踵を返す


「トーゴも一緒に入ろうよ」


「いいって」


「ダメ?」


「ダメ」


「どうしても?」


だだっ広い風呂ならともかく、丸い五右衛門風呂の形をした檜の風呂

二人で入ったら、それこそゆとりなんてないだろう


「狭いじゃん」


「………トーゴと一緒に居たいの」


ベッドで一緒に寝ることに慣れても、それは服を着てるからであって───

『人間と猫』

そう思うことで理性を保ってるのが現状だ