猫の恩返し

『俺が教えたってことは絶対バラすなよ』


「言わねーよ」


『正直、何でもありなヤツだ。ホームレスでも暴力団でも…金さえ積みゃ、誰でも診てくれる。その代わり、報酬も最低十万単位。………覚悟があるんならな』


「分かった」


『ナツちゃん、そんなに悪いのか?』


溝口は、ナツが猫だと信じてくれているのだろうか


「分かんねー。でも、ここ最近体調良くなかったし、血ぃ吐いて倒れてる」


『………そっか』


「溝口」


『あ?』


「ありがとな」


『…捕まんなよ』


「了解」


電話を切ってポケットに突っ込み、ナツを背負う


「ナツ、頑張れよ」


俺の肩からだらんと垂れた手が、ギュッと俺の服を握り締めた


「すぐに医者に見せてやるからな」


いい友達に恵まれてよかった…と、そう思う