猫の恩返し

『もしもし』


「悪い!お前に迷惑は掛けないから、教えてくれ!」


『何だよ、いきなり…。俺、まだ仕───』


「命が係ってるんだ!」


今日は勤務日なんだろう

俺達が終わっても、溝口達は明日の朝まで仕事だ

それを伝えようとした溝口の言葉を遮って叫ぶ


『………』


「…悪い」


『どうした?』


「………闇医者を…教えてほしい」


『お前な…、頭でもイカれたのか?正気の沙汰じゃないだろ』


「俺は大真面目だ」


呆れたような溜息が、電話口から聞こえた


『命が係ってるから闇医者を紹介しろ?俺達公務員だろ!そんなことで職を失っていいのか?ってか、バレたら職を失うどころじゃ済まないぞ』


「それで元気になるなら、何でも受けてやるよ」


『ばっかじゃねーの』


「…かもな」


情けない笑い声が、室内に響く