猫の恩返し

「ナツ!大丈夫か?」


ナツの体を起こそうとして傍に手をついた瞬間、ヌルッとした感触に手のひらを見た


血?

どこか打ったのか?


顔を寄せると、顎の辺りに血痕が残っている


「ナツ!しっかりしろ!ナツ、何があった?」


苦しそうに呼吸をし、目を開けない


119!


電話を取り出そうとして、ふと手が止まった

ナツは人間じゃない

保険証もない

そんな状況で、普通の病院で見てもらえるのか


じゃあ、動物病院?


『人間の姿をしてるけど、実は猫です』なんて、あり得ない


どうしたらいいんだよ


「───っ、うー…」


「ナツ!苦しいのか?」


額に脂汗を浮かべ、顔を歪めている


どうしたら…どうしたら………


悩んでいる間にも、ナツの表情は歪む一方だ


───もう、あれしかない


電話を開き、溝口に電話をした