猫の恩返し

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『温泉行きたい』


そんなメールが届いたのが、雪が降り始めた昼頃

今朝ナツが何か言いかけて止めたのは、これのことか

本人に確認すべく、あえて返信はせずに帰宅する


「ただいまー」


幸い昼間に降った雪はすぐに止み、足元もそんなに濡れずに済んだ

玄関のドアを開け、室内が寒いことに不安がよぎる

奥に見えるリビングのドアの向こうの電気は点いたまま


「ナツ?寝てるのか?」


いつもなら風邪でもすぐに飛んでくるはずだし、寝てるなら電気を消している


「ナツ?」


玄関から一番近い、寝室のドアを開いた

真っ暗な部屋の電気を点けると、ベッドは空っぽ


「ナツ!」


不安が現実になる

リビングを開けて目の前に飛び込んできた光景

それは、床に倒れこんだナツの姿───