猫の恩返し

トイレの水を流すと、その流れが楽しいのか便器に顔がつくんじゃないかというほど接近し、両手で抱えてへばり付く


「あの…さっきの…。これからは『トイレ』って言うんだぞ」


「と…いれ…?」


「そ、トイレ」


「トイレ!」


「ん、よく出来ました」


俺の言葉に顔をふにゃっと崩し、笑顔になった


この顔…刺激が強過ぎるだろ…


女を好きになるという感情が、久し振りに湧き起こった気がする


………

違う

コイツ、猫なんだっけ


どこまで本気にしたらいいのか分からず、軽く頭を振った

トイレを出、時計を見上げて、出勤しなければいけない時間になっていることに驚く


コイツ一人で家に置いてるのもな…

どうするか…


チラッと見てみると、目が合い首を傾げる彼女