猫の恩返し

「ねぇ、今の誰!?」


腰に回した両手で俺を揺すり、声を荒げるナツ


「元カノだよ、元カノ」


「『もとかの』って、何?!」


あまりに大きな声なので周囲の人間だけじゃなく、離れた場所に居た雅美も振り返った


「ちょっ…バカ!叫ぶなよ」


これじゃあ、昔の女のことで喧嘩してるカップルだ


「あー、もー…。何なんだよ…」


ガシガシ頭を掻いて、怒るナツを見下ろす


「ってか、だいたい何でそんなに怒ってんの?」


「………だって…。あの人、トーゴのこと好きって言ってたもん」


は?


「いつ?さっき、そんなこと一言も───」


「耳…」


「耳?」


「聞こえた」


あ───…

そーいえば、猫って目と耳がよかったんだっけ…?


「んで?だからって、何でお前が怒るんだよ」


俺達が別れた原因はアイツの浮気であって、好きだった俺の気持ちを裏切ったのもアイツ

それに、雅美が俺のことをどう思っていようと、もう終わった話だ