風が静かに吹く。

少しだけ冬の匂いを連れて来た気がした。

「ねぇ、好きって何?」

私は、日向ぼっこをしている奈緒に聞く。

「…え?」

奈緒は、大きな目を更に見開いて。

不思議そうに、こっちを見つめる。

そりゃ、そうなるよね。

でもね。

「あのね、最近わからなくなったの。好きとか、そういうの。」

あんなに好きだった京介のことも。

よくわからなくなってきた。

もう、あのトキメキもない。

ただ、色褪せた日々を過ごしているだけ。

私は、何かを無くした。

それだけがわかってて。

その何かがなんなのかはわからない。

「…ねぇさ。」

躊躇ったように、空いた小さい唇。