キーンコーンカーンコーン

ちょっとだけ高い音のチャイム。

「ありがとうございました。」

学級委員の号令にあわせて皆が礼をする。

最後の授業も私は寝なかった。

あぁ、もう1日が終わるのか。

掃除が終われば帰れる。あと、掃除だけ。

私も皆に合わせて、机と椅子をさげる。

「茜、行こっ!」

奈緒が楽しそうに笑う。

「あ、うん」

美術室前の廊下。

いつも通りの変わらない掃除場所。

でも、何かが違った。

「あ…」

奈緒の微かなこぼれ落ちた声。

その声が、誰が来たかを教えてた。

顔をあげると、少し先に京介の姿。

「京介君…」

奈緒の声が恋する女の子。

ズキン

あぁ、私には傷つく権利なんてないのに。

まだ、痛いんだ。

太陽には、

あんなに大丈夫って言ったのにな。

バカだな、私…。

でも、前あった痛みとは違う気がした。

京介も奈緒に気づいて。

二人とも困ったように、照れたように

微かに笑いあって…。

なんだか、二人を見てられなくて。

私は、逃げるように掃除道具を

取りに行く。