『私ね、昔京介のこと好きだったんだ。』

でも、告えなかった。

でもね、もう違うから。

奈緒とのこと応援してるから。

あーあ。

きっと、優しい奈緒だから私のことを、

心配するんだよな。

もう、いっそのこと

奈緒が最低な人だったらよかったのに。

私のことを、嘲笑って。

貶して。

見下して。

そんな人だったら、よかったのに。

「茜、次移動教室だよ!」

佳奈の透き通った声が響く。

「あ、うん。」

今、何を私は考えていたっけ。

何を想って、何をしたかったの。

どうなっても。

奈緒は変わらない。

奈緒は、優しくて。可愛いくて。

本当に、大好き。

きっと、京介もこんな奈緒だから好きに

なったんだ。

忘れようと思いながらも。

溢れてくる。

断ち切らなくちゃいけない。

私は、次の場所にいかなくちゃいけない。

次は、もっともっといい人で。

そう、次。

断ち切ろう。

あの時の想いも、あの日の涙も。

そう、決めたから。

分厚い教科書とノートを掴む。