「茜?どーした?聞いてるかー?」

「あ、ごめん。何?」

京介(きょうすけ)が困ったようにこっちを

見てる。それだけ少し心臓の音が、速く

なっているのが分かる。

「んー、俺なんの話ししてたっけ?」

分かるよ。君が今している顔は、あの顔。

ズキッ

あー、柄じゃないよ私。ズキッっとか。

「どーせ、山口さんの話でしょ?」

あ。また、可愛げのない言葉。

でも、どうせ可愛い言葉なんか言っても、

君は、私のことを好きにならない。

知ってる、知ってるからこんな風に

話すんだよ。

「あー、そうかも。てか、俺まじで好きだ

わ。ヤベー。可愛すぎじゃねぇ!?」

「いや、知らないし。私。」

知ってる。本当は知ってる。山口さんは、

本当に可愛い。笑顔が特に可愛い、

京介が好きそうなタイプだし。

私とは、正反対な可愛い子。

「あ、私帰んないと。バイバイ、京介。」

時計を見る素振りをして。

わざとらしいけど、こうするしかない。

「‥そっか、ん。じゃあね。気をつけて。」

京介の顔が見れない。

でも、なんとなく京介の声が寂しそうに

聞こえる。

それは、きっと私の願望。

鞄を掴んで足早に席から離れる。

なんか、今はもの凄くこの話しはされたく

ない。

ねぇ、京介。今日、私誕生日だよ?

京介に放課後遊ぼうって誘われて、

一人でうかれすぎてたかも。

何かあるかもって。おめでとうって、

笑顔で言って欲しかった。

その言葉があれば、なんでもよかった。

私を好きにならなくても・・・。

手を振って、京介に顔を見られないように

そそくさと帰る。情けないな、自分。

知らないよね。知ってるはずがないよね、

私の誕生日のことも、

私が京介のことずっと想ってることも。

何にも知らない。気づくわけないもん、

京介は山口さんのことすきだから。

だれよりも想ってるから。

でも、知ったらきっと困るよね。

嫌われるよね。

もう一緒にいられなくなるかも。

ズキッ

嫌われたくないな。

でも、横にいたらまた辛くなるよ。