この恋、永遠に。【番外編】

 柊二さんが私の姿を見て微笑む。髪を結び終わった私の腕を軽く引っ張ると、その腕の中に私を閉じ込めた。

「驚いた。まるで妖精かと思ったよ」

 優しい眼差しで私を見下ろした柊二さんが、私の頭に軽くキスを落とす。歯の浮くような台詞も彼が言うととても自然だ。
 けれども私はやっぱり頬を赤くして照れた笑みを見せた。

「もう、柊二さん、褒めすぎですよ」
 顔を上げた私に柊二さんは「本当のことだから」と言って今度は額にキスをした。



 私たちが船に乗り込むとまもなくエンジンがかかった。ゆっくりと沖へ出て行くこの船は大型船だ。柊二さんが「小型船だと美緒が船酔いするかもしれないから」となるべく揺れの少ない大きな船を選んだ。妊娠中で薬が飲めない私への優しい配慮だろう。

 私は柊二さんとデッキに出ると、船首に回った。
 日差しは強いが日本と違って湿気がなくカラリとしている。風が頬を撫でていくのが気持ちよくて、私はしばし目を閉じてその感覚を楽しんだ後、目の前に広がる水平線を眺めた。

「イルカはどこにいるんでしょうか」

 大型船だからか、青く透き通った広い海がよく見渡せる。デッキの柵に手をかけてキョロキョロと海を見回しながら聞くと、柊二さんが私の背後に立ち、私をその腕の中に囲むようにして自分も柵に両手をかけた。

「もう少し沖だよ。餌付けされているからすぐ近くで見ることができるんだ」

 彼の低くて耳に残る声が頭上から聞こえる。

「そうなんですね。イルカ、来てくれるかな…」

 グアムのイルカ遭遇率は高いと聞いた。けれども百パーセントじゃない。見られなかったらさぞ残念な気持ちになるだろうと思って、私は少し心配そうに呟いた。
 柊二さんがクスリと笑った。