この恋、永遠に。【番外編】

 私が何も話さずじっと外の景色を眺めていると、隣に座った柊二さんが顔を寄せて来た。

「そういえば、これが美緒との初めての旅行になるね」

 耳元で囁かれた言葉に私が振り向くと、彼は私と同じように窓の外の景色を見ていた。そしてすぐに私を見て微笑む。

「そうですね」

 私が笑って頷くと、彼は少し眉尻を下げた。苦い笑みを浮かべている。

「二人の初めての旅行が社員旅行だなんて……孝が聞いたら呆れるだろうな。結婚してもうすぐ子供も産まれるというのに、新婚旅行すら行けていないなんて」

「そんなことないですよ。結婚したときは、私も自分の足のことで必死でしたし、柊二さんだって、ニューヨークの社長と、日本に戻る準備ですごく忙しい時だったじゃないですか。それに、初めての旅行が社員旅行っていうのも素敵な思い出になりそうです。だって、柊二さんと一緒ですし、それにこの子も……」

 私は膨らんだお腹をそっと撫でた。大人しい子なのか、あまり胎動を感じない。それでもたまに動いているのを感じると嬉しくなる。柊二さんと私の子ども。楽しみを増やしたくて、性別はまだ聞いていない。大人しいから女の子なのかな。それとも柊二さんのように、落ち着いた男の子なのかも。そんなことをあれこれ考えるのも楽しくて仕方がない。
 柊二さんがお腹を撫でている私の手の上に、自分の右手を重ねてきた。

「そうだね。俺も美緒と一緒ならどこでも楽しいよ。だけどやっぱり今度は社員旅行なんかじゃなく、二人でどこか旅行に行こう」

「その時は二人じゃなくて、三人ですよ」

 私が指摘すると、彼は「そうだった」と言って笑った。
 その後も柊二さんは私の腹部に手を置いたまま、たまたま動いたお腹を感じて目を輝かせていた。彼はとても愛情深い人だ。きっと、いい父親になるだろう。私はそんな柊二さんをしばらくずっと見つめていた。