花純がフェンスに手をかける。



ちょっとジャンプすれば、乗り越えられそうな高さのそれ。



≪高ぁ~≫



≪何、当たり前の……え?≫



ひょいっと、花純がフェンスを乗り越えた。



≪ねぇねぇ、純斗くん≫



僕が大好きだった笑顔を、クルリとこちらに向ける。



≪飛ぶね≫



≪は?≫



たった三文字が、聞き取れなかった。聞き取りたくなかった。



≪まっ…≫



「まっ…!!」



向こうの僕と、ここの僕の声がダブる。



画面の僕が、彼女に向かって走り出す。



≪ぁっ…!!≫



そして、濡れた地面でツルリと滑る。



ああ…。もう、お終いだ。



滑った僕の手が、彼女の背中と、トンッと押した。