「雨か・・・」



もうすぐ梅雨入りする季節。



天気予報では今週一週間は雨が続くと、予報士が声のトーンを下げて言っていた。



僕はビニール傘を開くと、傘の花が咲き誇る人混みへと紛れた。



「つっ・・・」



 こんなとき。



僕は後頭部に違和を感じる。


 
あの時にできた傷だ。



あの時―堕ちたときの傷。


 
「・・・」



痛む後頭部を押さえながら、歩を進める。

 

「はぁ・・・、」


あれからもう何年も経った。



それでも、彼女の事を忘れるなんて出来なかった。いや、したくなかった。


 
「ははっ」



笑えてくる。



未だに、彼女のことが好きだなんて。



あんなことしておいて。

 

「っ」



ダメだ。これ以上考えたら。



「・・・また壊れる」


呟いて、前を向く。



と。



「え・・・」



彼女がいた。