「か……、す、み……?」




掠れる声で、彼女の名前を呼ぶ。




彼女は憂いを含んだ瞳で、僕を見つめフッと微笑んだ。




「かすっ…みっ…!!」



一刻でも早く彼女に触れたい。



そう思い、駆け出そうと右足を出しかけて、違和感に気付く。



「え?」



足が全くと言っていい程動かないのだ。




「クソッ…クソッ、クソッ!!」



動けよ、僕の足!!



なんでこんな時に!!



まるで、誰かに掴まれているみたいに動かなかった。



視線を前にやると、彼女が踵を返す途中だった。



「まっ…、かっ、す…ぃっ…・」



声までうまく出なくなり始めた。



嘘、だろ……。



このままじゃ、花純が…、花純が行ってしまう。



「花純っっっっ!!!」



叫ぶや否や、花純は見えなくなってしまった。