「花純」



「ん?」




この前、隣の部屋に住むおじさんに貰ったいちごを片手に、花純の家を訪れたことがあった。




呼べば、振り向いてくれた彼女は、小さく笑って小首を傾げた。




「この前、隣のおじさんにいちご貰ったんだけど・・・」




ここまで言って、気が付いた。




「あ・・・」





花純はいちごが苦手だったんだ。




一緒に美味しいいちごが食べられると思ったのに・・・。ってか、気付くの遅すぎだろ、僕。




「ごめ・・・なんでも」



「いちご?へ~。私も食べたい~」



「え?」



「私もいちご、食べたい。・・・ダメ?」



驚いて声が出ない僕に、彼女は上目遣いでそう聞いてきた。