「明純(あすみ)……です」




それを聞いて、僕は違和感を覚えた。





でも、理由がわからなかった。






だから、『まあいいや』と思った。





ーーこれは、大事な事だったのに。






「明純さんですね、わかりました」





すると明純さんは準備が整ったのか立ち上がった。





「はい。では私はここで。
ありがとございます、ごちそうさまでした」



明純さんは軽く頭をさげた。




それに慌てて僕も立ち上がり、軽く頭を下げた。





「いえいえ、もとはといえば僕が悪いんですし」





「いやいやいや、大丈夫ですよ。では」




明純は笑顔でそう言って、颯爽と店を出ていった。




僕はそれを自分の席から見送ると、明純が見えなくなったところで力が抜けたように座り込んだ。




「はぁ……」




今日はすごい日だ……。





花純の妹に会うなんて、それに道のど真ん中で抱きしめてしまうなんて。