「お前は、大天使様のお告げを信じて、ここまで来た。そして、これからは国王陛下にだって、会おうとしている。そんな少女に義理の兄が手を出すのは、いけないだろう」
 それだけじゃないがな。その会おうとしている国王陛下の血筋だから、ヤバイっていうのもあるのさ。秘密だがな。
 その二人の話を聞いていない振りをし、水の入ったジョッキを空けたバルテルミは、近くにいた同じ従者の男と目が合い、苦笑した。
「あの子が良い子だっていうのは聞いてるが、大天使様のお告げっていうのは、どう思うよ?」
 それに気付いた相手の男が小声でそう言いながら近寄ってくると、バルテルミは「さぁな」と言いながら両肩を少し上げた。
「普通なら頭がおかしい子か魔女ってことになるんだろうが、陛下にまで会おうっていうんだ。どっちでもないんだろうな。だが、それ以上のことは、分かんねぇよ」
「知り合いじゃなかったのか? ヴォークルールを出る時に声をかけられてただろう?」
「ああ。少し剣を教えてやったのさ。形だけのな」
「その時は、どうだったんだ?」
「普通の子だったぜ。本当に普通の、どこにでもいるような娘だった」
 ───だから、可哀相な気がしたんだ。
 その言葉は、ぐっと飲み込んで。