「お告げで知ったのです」
「お告げ?」
 その言葉に、それまでジャンヌに好意的だった男が、初めて顔をしかめた。
「この子は、マルグリッド様や大天使ミカエル様からお告げを受け、ここに来たんです」
 兄、ジャンの言葉に、ジャンヌも頷いた。確かに、お告げを受けて、ここに来ようと思ったので。
 但し、ここの守備隊長の名は、着く前に出会ったバートに教えてもらったのだが。
「魔女なのか……?」
 疑るような目つきで門番がそう尋ねると、ジャンヌとジャンは同時に何度も首を横に振った。
「違いますよ! そんなに邪悪な子に見えますか?」
 ジャンのその言葉に、門番はまじまじとジャンヌを見詰めた。
 銀に近い、少しウェーブのかかった髪が、日の光を浴びて、キラキラと輝いている。そして、瞳はというと、澄んだ湖の様な色をたたえていた。どう見ても、邪悪とは正反対の、澄んだ感じがした。
「いや……」
 そう言うと、門番は道を開けた。
「ありがとうございます!」
 心の底から嬉しそうにそう言い、微笑む少女に、門番は思わず顔を赤らめた。
「いや、礼を言われる程では……」
 そう言いながら、コホンと咳払いをする男にジャンヌが微笑むと、男は赤い顔のままで言った。
「その……ピエールだ」
「ピエール?」
 その名に、ジャンヌが目を丸くすると、ジャンと顔を見合わせた。
「俺の名だが、どうかしたか?」
「兄と同じ名なので、驚いただけです」
「兄って、そいつの他にもいるのか?」
「はい。この兄の上に、もう一人」
「それが、ピエール?」
「はい」
 ジャンヌがそう答えて頷くと、ピエールは微笑んだ。
「そうか。じゃあ、兄さんだと思って、何か困った事があったら、俺を頼ってくれ」
「ありがとうございます!」
 ジャンヌは礼を言うと、馬を連れて中に入って行った。