「ええ、まぁ……」
「ほう、そうか」
 ロベールはそう言うと、ニヤリと少しいやらしい笑みを浮かべたが、すぐに真面目な顔つきになった。
「女に惚れて、自分の家に連れて行ったりするのは、構わん。だがな、守備隊には入れるな! こんな田舎の守備隊といえど、一応、軍だ。若い女など入れては、規律が乱れるからな」
「はい……」
 若い門番は、ロベールの言葉に肩を落とした。
 そんな彼を見て哀れに思ったのか、ロベールはそこを立ち去ろうとして、振り返った。
「誰もこの街に入れるな、とは言っとらん。早く中に入れてやれ! まだ明るいからいいようなものの、暗くなるまで外で待たせていると、危険だからな」
「はい!」
 その言葉に、若い門番は目を輝かせると、下に向かって走って行った。
「分かりやすい奴だな」
 ロベールはその後姿を見送ると、苦笑しながらそう言った。

「良かった! 入れて頂けるのですね!」
 その若い男の招きで、門を開けてもらうと、ジャンヌはホッとしたようにそう言った。
「ああ。だが、守備隊には入れん。ただ、この街への出入りを許可するだけだ」
「ロベール様にもお会い出来ないのですか?」
 少女のその言葉に、男は目を丸くした。
「何故、隊長の名を? どこで聞いたんだ?」
「ロベール・ド・ボードリクール様ですよね?」
 構わずにジャンヌが彼のフルネームを言うと、益々男は目を丸くした。
「フルネームまで知っているのか! 一体、誰に聞いた?」
「それは……」
 言い澱む彼女の横から、ジャンが進み出て言った。