「成程な」
 暖炉の炎が小さくなった頃、バートはそう言い、あくびをした。
「長くなってしまい、すみません。もう遅いので、休みましょう」
 シモーヌはそう言うと、暖炉の火を消した。
「そうだな。明日、俺も出掛けるしな」
「あのお宅に、ですよね?」
 そう言いながら、シモーヌは暗くなった部屋のベッドの端に腰かけた。
「あそこは、お前一人で充分だろ。俺は、別の所に行く」
「別の所?」
「お休み」
 だが、彼女の問いに答えることなく、彼はそう言うと、すぐにいびきをかき始めた。
「バート……」
 シモーヌは暗い中、そんな彼の寝顔を見ていたが、やがて諦めたのか、背中を向けて眠り始めた。彼のいびきが狸寝入りだとは思いもせずに。