「あら……」
「ジョルジュ?」
 突然、暗い茂みの中からジョルジュが現れたことに驚いた二人が、思わずそちらを見て各々声を上げると、ジョルジュは真っ赤な顔で言い訳を始めた。
「あ、いや、その……本気で邪魔しようと思った訳じゃなくて、ちょっとびっくりしただけで……」
「邪魔?」
 シモーヌが思わずその言葉に反応し、持っていた槍を見ると、マルクが手で彼女を制した。
「そうか。なら、消えるか?」
「え!」
 思わぬ兄の言葉に、ジョルジュは目を丸くし、シモーヌを見た。
 彼女は、どうしたらいいのか分からず、マルクを見るが、彼はこっそりウィンクしただけで、すぐに弟を睨みつけた。
 それって、ちょっとやり過ぎなんじゃ……。
 心の中ではそう思ったものの、マルクはジョルジュの兄。何か、考えがあってのことなのだろうと思い、シモーヌは反論を控え、黙ってマルクを見た。
「何だよ、何だよ! バートの次は、兄貴かよ! 乗り換えるのが早過ぎやしないか!」
 そんな二人の姿を見て、頭に血が上ったのか、ジョルジュがそう叫んで、茂みの葉を手で数枚、乱暴に引きちぎると、流石に黙っていられなくなったのか、シモーヌも口を開いた。
「私は、そんなに軽くありません! 今のは、馬が使えないから、槍で防御しながら戦う方法を教えてもらっていただけです! マルクさんがいないところでも、ジョルジュさんを守れるように!」
「俺の為……?」
 その言葉に、ジョルジュの態度は大人しくなったが、その顔は益々真っ赤になっていった。
「約束したでしょう? 騎馬以外でご一緒するって」
「お、おう」
 耳まで真っ赤になってそう返事をするジョルジュは、どうやら彼女の顔をまともに見れない位、舞い上がってしまっているようだった。
「……やっぱり、駄目です」
 だが、そんな二人の仲を裂くかのように、マルクが二人の間に割って入り、シモーヌを自分の背で隠した。あの時、港でバートがしたように。
「何だよ、兄貴?」
 ムッとした表情でジョルジュがそう言うと、マルクは首を横に振った。
「まだそんな態度をとるようでは、彼女を任せられません」