「ふぅ……」
 二人で外に出ると、ほぼ同時に溜息をついた。
 そして、互いにそれに気付くと、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「ジョルジュさんは……」
「多分、ここから近い丘の上でしょう。ひょっとすると、悔し泣きをしているかもしれないので、もう少ししてから行った方がいいかもしれません」
「悔し泣き、ですか?」
「あ、今はしないかもしれません。もう大人ですから、あいつも。でも、昔は……もっと小さかった頃は、怒られると拗ねた顔をして、木の上に登り、こっそり泣いたりしていたんです」
「まぁ……」
 シモーヌが目を丸くすると、マルクは微笑んだ。
「意外ですか?」
「少し……」
「いつも気が強そうな振りをしてますからね、あの子は」
「そうでもないんですか?」
「昔と変わっていなければ、少し虚勢を張っているところもあると思いますよ」
「なるほど」
 そう言うと、シモーヌはマルクを見ながら頷いた。
「流石、お兄さんはよくご存じですね」
「まぁ、二人だけの兄弟ですからね」
 マルクはそう言うと、微笑んだ。
「素敵ですね」
 そのシモーヌの言葉に、彼は彼女を見ながら尋ねた。
「貴女は、兄弟がいないんですか?」
「一応、兄がいますが、兄といっても、実の兄ではありませんから……」
 そう言うと、シモーヌは目を伏せた。
「えーと、その……私でよければ、何時でも相談に乗りますから、元気出して下さいね」
 何か事情がありそうだと思ったのか、マルクが少し困った表情をしながらもそう言うと、シモーヌは微笑んだ。
「大丈夫ですよ、マルクさん。私は兄のことを心から敬愛していますし、兄も私に優しく接してくれていますから、何も困ったことなんて、ありません」
「そうですか」
 そう答えながら、マルクはほっとした表情になった。
「まぁ、貴女を見ていれば、愛されて育ったというのは、分かりますからね。真っ直ぐに育ったって感じがしますから」
 そう言って彼が微笑むと、シモーヌは少し困った表情で首を傾げた。