「あの……あまり個人的なことをお尋ねするのも失礼だと思うのですが、その……」
「バルテルミとでしたら、別れましたよ。既に」
 あっさりそう言うシモーヌに、ピエールは困った表情になった。
「そ、そうですか……」
「そんなに私達のことは気になさらないで下さい。乙女や貴方には関係の無いことなんですから」
「そ、そうなんですか……?」
 少し遠慮がちにピエールがそう尋ねると、作り笑いを浮かべてシモーヌは頷いた。
「ええ。私達二人の問題です。彼には、もっと大人の女性がお似合いだったというだけですよ」
「それは無いと思います!」
 シモーヌの言葉を遮るようにそう言ったピエールに、シモーヌは目を丸くした。
「お二人がどういういきさつで別れられたのかは知りませんが、これだけははっきり言えます。バルテルミさんはまだ、シモーヌさんのことが好きです!」
「そ、そうでしょうか?」
「そうですよ! 俺も叶わぬ相手を想い続けているので、分かります!」
 ピエールのその言葉に、シモーヌは微笑んだ。
「ピエールさんのお相手は、ジャンヌさんですよね?」
「あ、いえ、それはその……」
 困った表情で彼がうつむくと、シモーヌは微笑んだ。
「バレバレですよ。乙女の傍にいて、貴方の気持ちに気付いていない人なんて、いないんじゃないですか」
「そ、そうなんですか……?」
 頬や耳を赤くしながら、困った表情でそう言う彼に、シモーヌは微笑みながら頷いた。
「ええ。皆、わざわざ口には出さなくても、気付いていると思いますよ」
「そ、そうだったのか……。って、私のことはいいんです! というか、そんなことで誤魔化されませんよ!」
「別に誤魔化そうと思ったわけじゃありませんが……」
 今度は、シモーヌが困った表情になった。
「じゃあ、ご存じですか? バルテルミさんがいつも一人で呑んでらっしゃるってこと」
「たった一人で、ですか?」
 これには、シモーヌも目を丸くした。