「あのさ…。」

「どこから出した。どうやって、渡した…というツッコミは、なしですよ。」

 ……はい。

「えっと…『市長候補 カエサル=シーソー』…また、無駄にこんなことにお金を使って、あなた、本当に市長になる気あるの?」

 いやいや…恵、説教とかいいから。

「おや、財政削減を宣言している以上、無駄にお金を使うな…といいたいのですね。これは手痛い指摘だ。」

 ハハハ…と、笑いながら、額にペチッと手を叩くシーソー。

「あのさ…。」

「先ほどの台詞参照です。」

 …………はい。

「わかっているのですよ。ですが、私は勝たなければいけないのです。そのためには少しでも、皆さんに名前を覚えてもらう努力が必要。そして、そのためには多少の出費は仕方ないと…。なにせ、私はご覧のとおり、どこにでもいるシーソーですからね…。私のような何の後ろ盾もない凡人が人の上に立とうと思うと、普通の人の倍の努力が必要なのですよ。」

 いいながら、またシーソーはハハハと笑いながら、額にペチッと手を叩いた。

「う~ん…。」

「わかります。わかります…。しゃべるシーソーがどこにでもいてたまるか…。とか、そういう話でしょ?でも、突っ込んだから、負けなのです。負けなんですよ!!!」

「わかってるよ…実くん…だけど…。」

 どう考えても、こいつはわかってると思って、やっているとしか思えない…。

 苦しい…はっきり言って、とっても苦しい…。

 自分をここまで苦しめる相手が、この世にいるとは…。

 もしかして…こいつは…。

 ワイルダー史上、最大の強敵!!!!!!

「詭弁ねぇ~…。そんなことで、この市が本当に変えられるのかしら?」

「変えて見せますよ。そのために、私はこの50年、常にこの市をこの公園から、生暖かい目でじっくりと見てきたのですから…」

 それが、スイッチだった。

 プチッという音ともに、青山家が代々引きづき、当然茂にも持っている切れてはいけない、何かの緒が音を立てて切れた。

「み…実くん…限界だ…。」

 これ以上は、持たない…。

「ブルー…いけません!まだ!」

 必死に、茂の腕をつかむ実くん。

 とめるな…。イエロ…。