「私が当選したあかつきには、無駄な税金を減らし、福祉を増やし、お年寄りに優しい市への改善をお約束します。」

 選挙事務所の近くの公園、そこではシーソーが立会い演説をしていた。

 見るからにシーソーだった。

 滑り台でも、ブランコでもなくシーソーだった。

 シーソーの周りに、人だかりができて、その誰もがシーソーの演説に聞きほれていた。

 うん…。

「帰ろう。」

 きびすを返して、立ち去ろうとする茂を…。

「ここまで来て、何を言い出すのですか。ブルーは…。」

 実くんにとめられた。

 中学生とは思えない、腕力だ。

 この細腕のどこにそんな力が…。

「だって、どう見たってシーソーじゃないか?子供たちが両端にのって、ギッコンバッタンと遊ぶ、シーソーじゃないか?なんで、シーソーが市長選に出てるんだよ?おかしいだろう?」

「そこに突っ込んだら、負けです!!」

 いや…そこに突っ込まなければ、どこに突っ込む?

「なんだか、市長選に出てくる連中って、誰も同じようなこと言うわよね…。まぁ、過疎化が進んでいる街じゃあ、福祉は大きな問題だからね…。」

 恵…シーソーに対して、言うことはそれだけか?

「おや…これは、カミレンジャーの皆さんじゃないですか?」

 人だかりを遠めに見ていた茂たちだったが、とうとうシーソーと目が合った。

 一気に人だかりの目線が、シーソーからこちらに移る。

 うわっ…。俺たち知り合いだと思われた!

 しゃべるシーソーと知り合いだと思われた!!!!

「イエ、人違イデス…。」

「…全身ブルータイツに変態マスクかぶりながら、口にしている時点で、説得力ゼロですよ。ブルー。」

 わかってるよ…実くん…。

 だけど、言いたいじゃん。

 っていうか、変態マスクって言うなよ……これでも、けっこう気にしてるんだから…。

「カミレンジャーの皆さんこうして、お会いするのは初めてですね。私、こういうものです。」

 言われて差し出されたのは三枚の名刺。

 それを、それぞれブルー、イエロー、ブラックに渡す。