榎本は一瞬固まってから、私が差し出したチョコバナナの先を囓った。 「うまい」 もぐもぐと口を動かしながら言った。 はっ、と榎本を見たまま固まっていたことに気がつく。 あまりにも榎本の動作が自然すぎたからだ。 榎本は見るからに髪がサラサラで、食べる直前に耳元の髪を落ちてこないように耳にかけた。 そして、口の中に収まる量を齧ったのだ。 そこら辺の男子どもとは違う。 一連の動作が綺麗だった。 見惚れてしまうほどに。