「なんかいつもより笑ってないなーって思って」 「そうかな…?」 いつも笑っている覚えもないが、榎本から見たらそうなのだろう。 そう思っていると、 「ねえねえ。」 …? 榎本が何故か小声になり、私の方に顔を近づける。 「ん?」 と、尋ねると榎本が耳元で囁いた。 「桂木、もしかして泳げない?」 「ぅえっ!?…ぇっと…な、何で、分かったの…?」 つい動揺して声が大きくなりかけたのを抑える。 …ズバリその通りだった。 私がプールに来たくなかった理由。 ーーそれは金槌だということ。